学部長便り2011年8月号

公開日 2012年09月04日

8月号 「大発見」と「大博士」

椎名林檎がヴォーカルをつとめる「東京事変」というバンドが、少し前に「大発見」というアルバムを発表しました。私は音楽には疎いのですが、以前から林檎には一目置いており、今回のアルバムも買おうと思っているのです。アルバム発表を契機に音楽チャンネルでも「東京事変」の特集番組が組まれ、それも私はちゃんと録画したのです。そのひとつに「東京事変」のメンバーによる座談形式の番組があり、日頃あまり聞くことのできない個々のメンバーの「しゃべり」をたっぷり堪能することができました。その中で、今回の「大発見」というタイトルについて、ただの「発見」や「新発見」ではなく「大発見」だからすごい感じがするのである、「大」がつくと何でもゴージャスに思えるのだなどと、林檎は語っておられました。言わば「大」の魔術ということです。

なるほどなるほど、これも私が愛してやまぬ倉橋ヨエコというミュージシャンには「恋の大捜査」という壮大なタイトルの名曲があります。単なる捜査ではなくヘリコプターまで登場する「大捜査」なのであります。また目を転じれば、我々国文の世界でも、漢字辞典は「大漢和辞典」が最高峰なのであり、国語辞典は「日本国語大辞典」が最高峰であるという具合に、「大」のつくものは、えらそばっているわけです。近代文学も「日本近代文学大事典」は「大」がつくだけあって全6巻もあり、何でも知りたいことが載っており重宝しております。

ということなら、島根大学もえらそばった名前にするため、「大」をつけりゃいいやと考えたところ、すでに「大学」と「大」の文字が入っていることに今さらながら気づいた次第です。「島根大大学」も「島根大学大法文学部」もくどいだけです。なるほど「大」がつくから「大学」は、そもそもいばっているのだと言うことです。

ちなみに自他ともに認める私のニックネームは「大博士」と言います。昭和30年代に放映されていた「フィリックス」という黒猫のアニメに登場していたのが「大博士」と呼ばれる悪者博士です。いつも科学を悪用してフィリックスちゃんを困らせるわけです。私は、ブラウン管を通じてこの「大博士」の薫陶を受け、大学教員になってからは、自らを「大博士」と称することにしたのです。それがすっかり浸透し、学生からのメールも大博士、卒業生の年賀状も武田大博士様となったわけです。だがやはり、えらそばってふんぞり返っていたわけだ、と反省した夏の一日でした。