学部長便り2014年1月号 雪の学生

公開日 2014年01月14日

 「第1話」天気予報では午後から雪模様とのこと。空もどんよりしてきました。一人の学生が換気のために窓を開けました。冷たい空気がさっと流れこんできます。「あっ、先生これはほんとに雪が降りますよ」。彼女が嬉しそうに声をあげます。他の学生もいっせいに窓に向かい、叫びます。「ほんとだ、雪のにおいがする」。私も窓から顔を突き出してみます。くん、くん、くん。何のにおいもしません。「分かりませんか。雪が降る前はにおいがするんですよ。」「そんなものかね。まったく分からんなあ。」島根や鳥取の学生は、雪が降る直前に独特の匂いがすると言うのです。雨が降る前は、遠くから雨に濡れた土の匂いがしてくるんだよ。子どもの頃、親戚のおばあさんがそう聞かせてくれたことを突然思い出します。おばあさんの言うとおり、数分後に雨が降り出すのです。くん、くん、くん。鈍感な鼻である私には、雪の匂いは分かりません。でも、そのようなかすかな匂いで、きっと世界は充たされているのでしょうね。

 「第2話」窓の下には駐輪場が広がっています。降り積もった雪で、自転車も真っ白におおわれています。一人の女子学生が駐輪場にあらわれました。立ち止まってじっと地面を眺めていたかと思うと、不意に雪の上を小走りで走り始めました。しかし、すぐ立ち止まって、地面を眺めます。何をしているのだろう、落し物でも探しているのか。彼女は、再びさささと雪の上を進み、そしてぴたりと止まります。上から眺めていると、彼女の通った跡が真っ白な雪の上に、ゆるやかな曲線となって残されています。あっ、分かりました。彼女は雪の上に足跡で絵を描いているのです。雪上に大きなハートが浮かび上がっています。すると、彼女が移動しました。また地面を眺めています。次は何を描くんだろうか、どきどきします。いきなり動き出しました。今度は、動きが複雑です。まず、大きな輪をひとつ、そして少し離れて輪をもうひとつ。彼女の小刻みな足が、雪の上に一筆書きのように、線を浮かび上がらせていきます。完成したようです。大きな自転車です。サドルもハンドルもあります。一仕事終えると、女子学生はポケットからカメラを取り出してパチリ。お疲れ様でした。

 本日松江は、この冬2回目の積雪でした。雪の日の時だけ使用するエスキモー風の毛の帽子とスノーブーツを装着して、大学まで歩いてきました。普段よりずいぶん時間がかかりますが、雪の道中は楽しいものです。大学に着くと、法文学部棟の入り口で、事務職員の方々が雪かきをしています。私も参加させてもらって道を作りました。来月には琉球大学の先生と学生が松江にやってきます。その時も大雪が降ってくれたらと願っています。一緒に雪かきなどやりたいものです。

 

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