学部長便り2016年9月号 新潟雑感

公開日 2016年09月16日

 9月も半ば,中秋の名月の翌日にこの文章を書いています。月初めの更新を原則にしていますので,いささか遅くなってしまいました。言い訳になりますが,先週は所属している地理学研究室の学生実習で1週間新潟に行っていました。帰ってきた今週は溜まっていた仕事をかたづけるのに忙しく,今日になったという次第です。
 アクティブラーニングの1つとしてさまざまな分野で実習授業が行われています。その進め方として,教員が見学先・ヒアリング相手との交渉などを事前に行い,できあがった行程に従って進めるという形も多いようですが,当研究室の実習では調査テーマ,調査先を学生が考え(もちろん教員の指導を受けながら),事前の折衝も学生が行います。調査そのものにも教員は同行しません。1日の調査を終え宿舎に戻ったところで,その日の調査内容や明日の調査先を確認し,より良い実習になるようにはしていますが,基本的には学生の自主性に任せています。
 そんな訳で,教員は昼間自由時間となります。地理学の中でも人文地理学や地形学を専門にしていれば,自分の研究テーマに関連した調査などで時間を有効に使うこともできますが,気候学を専門にしている私は空を眺めることくらいしかできません。ということで,堅苦しく言えば景観観察,有り体に言えば町をぶらぶらしてきました。
 7月末に放送されたNHKの「ブラタモリ」で~新潟は“砂”の町~と紹介していましたが,新潟は信濃川と阿賀野川によって運ばれてきた砂が沿岸流と冬の季節風によって盛り上がった砂丘とその背後に作られた町です。新潟駅や中心市街地と海岸付近は約30mの標高差がありますので,上り下りも多く結構疲れました。でも,今回の街歩きで一番印象に残ったのは道の曲がりです。
 新潟は川が運んでくる砂を原料にしていますので,陸地は年々拡大していきます。町もそれに合わせて拡がっていきますが,新しい道はその時の砂丘の形に合わせます。そのため,新潟の道路は交差点ごと,あるいは交差点の途中でも微妙な角度で曲がっているのです。松江のような城下町では防御のために道を曲げることがありますが,新潟は自然に合わせた街造りの過程で道が曲がっているのです。国土地理院のホームページにある「地理院地図」では2万5千分1の詳しい地図も閲覧できますので,自然に合わせて曲がっていった道路網を是非ご覧になってください。

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