学部長便り2018年8月号  文楽鑑賞旅行記

公開日 2018年08月22日

 

83日、4回生のゼミ生たちと一緒に大阪の国立文楽劇場を訪れました。

私たちは、研究室の卒業生で関西ご在住の永田まち子さんにご紹介をいただいて、故桐竹紋寿師匠に、毎年劇場へ伺うたびにご指導をいただいていました。そして今はご門弟の桐竹紋臣さん、紋秀さん、紋吉さんに温かく迎えていただいています。今回も永田さんにお世話になり、またご退任後大阪にお住まいの名誉教授・芦田耕一先生もご一緒下さり、賑やかな鑑賞となりました。

まず楽屋をお訪ねし、紋臣さん、紋秀さん、紋吉さんのお話を伺いました。開演直前にもかかわらず、たくさんのお話をして下さり、しかもこのあと舞台に上がる人形を、私たちが実際に持たせていただくという貴重な経験をしました。

文楽では、三人遣いと言って、1人の人物の人形を、3人の人形遣いが動かします。3人の動作に調和が保たれてこそ、人形が生きた人間に見えてくる、その秘密について教えていただきました。人形の首(かしら)を遣う「主遣い(おもづかい)」の身体の動きを察知して、人形の左手を遣う「左遣い」、足を遣う「足遣い」が協調して動く。――理屈はわかりますが、でも、実際にそれをきちんと形にするには、長い長い修行が必要なのだと、改めて思い知らされます。

また、文楽の人形の顔は、目鼻などが全く動かないものも多い。それなのに舞台上であれだけ細やかな表情ができるのは、人形遣いが遣い方によって表現しているのだということも、実際の人形を用いながら教えていただきました。

開演前の舞台も見せていただき、大道具・小道具等がどのように配置され、人形が舞台上でどう動くかなどを教えていただきました。客席から見ていると、舞台上は本当に人間たちが生活している空間のように思えてくるのですが、そのための工夫が随所に施されていることを改めて感じます。

さて今回、近松門左衛門作の「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」という作品が演じられました。島根に住む私たちにとっては地元のお話――神話で有名な、素戔嗚尊(すさのおのみこと)による八岐大蛇(やまたのおろち)退治の物語です。ただし「日本振袖始」では、素戔嗚尊の妻・稲田姫(いなだひめ)が夫とともに大蛇と戦って倒すことになっている。つまり神話と比べてこちらのほうが、稲田姫がより活躍する話になっています。ここに近松のオリジナリティーがあります。
この度の公演で、この稲田姫を桐竹紋臣さんがお遣いになるので、私たちはとても楽しみでした。楽屋で、そして舞台で、稲田姫との対面がかないました。

2部、第3部と続けて、午後2時から8時半過ぎまでじっくり観劇しました。一同、文楽に対する理解を一段と深めることのできた、充実した楽しい鑑賞旅行となりました。

 
楽屋で桐竹紋臣さん、紋秀さん、紋吉さんのお話を伺う


楽屋にて。中央の稲田姫の人形を持っているのが田中


開演前の舞台。「新版歌祭文」野崎村の段

 

 
 

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