学部長便り2018年9月号  山西師範大学訪問記(その1)

公開日 2018年10月04日

 


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月号の掲載が10月に入ってからになってしまい、申し訳ありません。921日~25日、中国・山西師範大学を訪問しました。以下はそのご報告です。

まず北京へ移動し、国内線に乗り継ぎ1時間ほどで山西省太原市に着きました。太原空港には、楊媛さんが友人と共に出迎えてくれました。楊さんは、山西師範大学を卒業後、島根大学大学院修士課程に進学、私の研究室で学んだ後、現在は広島大学大学院博士課程に在学しています。今回一足先に帰省して私の来訪を待ち受けてくれたのでした。
このあと、太原市から、山西師範大学のある臨汾市へ車で移動しました。

翌日山西師範大学を訪ねると、外国語学院の薛成水先生が出迎えて下さいました。薛先生は楊さんの同大学時代の恩師で、今回私を招いて下さった先生です。
このあと戯曲学院を訪ね、講演を行いました。演劇を研究されている先生方と大学院生、約70名のみなさんが聴いて下さいました。中国語への通訳は、楊さんにお願いしました。

最初に自己紹介、島根県松江市のこと、島根大学のことを紹介してから本題に入りました。テーマは、日本近世文学における虚と実の問題について。近松門左衛門の演劇論を中心に、そこから詩や小説へと拡げて考察したところを述べました。

人形浄瑠璃の人形の顔は、人間の顔と同じように目鼻が動くことはない、全く動かないものもある。そもそもそれ自体、作られた人形なのであって、歌舞伎など、人が演じる劇とは異なる。――しかしその、本物の人間と重ならない「虚」の部分があることによって、かえって人間の真実が描き出せるということがある。
同じ江戸時代の詩や小説にも、これと通じる考え方を見付けることができる。「敷き写しに表現しないこと」の意味を、改めて考えてみたい。
以上のような趣旨のことを、私からの問題提起というつもりで述べました。

みなさん非常に熱心に聴いて下さり、次々に質問や意見が出され、活発な議論を交わすことができました。最後に学院長先生からも、中国の演劇を研究するためにも非常に参考になる内容だったとの評をいただくことができました。私自身にとっても大変有意義な経験でした。

このあと同大学の戯曲博物館を見学。山西省は古くから戯曲の盛んな土地で、戯曲に関連する史跡や資料も多く残っています。この博物館には、山西省内はもとより、中国全体にわたって調査収集を行ってきた成果が集められています。山西省の寺院に舞台が造られそこで劇が奉納されていたことを示す資料を見せていただき、私の住む島根県で盛んな神楽と近似していると思いました。実際に使われた面、上演風景を復元した模型などなど、感嘆の連続でした。

このあとの外国語学院での講演、山西省内の史跡見学などのことは、次号でご報告することにします。

     

戯曲学院での講演。通訳は楊媛さん    講演後、戯曲学院のみなさんと

 

 

 
 

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