学部長便り2020年第1号(6月1日)

公開日 2020年06月02日

 はじめまして、丸橋充拓です。

 田中前学部長をひきつぎ、4月から法文学部長を務めています。

 本学部において歴代学部長が受け継いできたこのお便りですが、今年度がかつて経験したことのない状況のもとで始まり、目の前の対応に追われる日々が続くなか、ここまでお送りできずに来ましたことを、まずはお詫び申し上げます。

 

 法文学部生、そして人文社会科学研究科生のみなさん、それぞれ家ではどんな風に過ごしていますか?主役たちの声が聞かれぬまま2か月が経ち、キャンパスからは躍動感やキラキラ感が消えてしまったかのようです。あれこれ不安を抱えた毎日を過ごしているのではないか、とても心配です。オンライン授業に不便を感じていることはありませんか?あるいは基本的な日常生活にもさまざまな困難が生じているのではないでしょうか?

 困っていること、悩んでいること、心おきなく指導教員や学部事務室、学生支援課などに相談してください。われわれスタッフ一同、みなさんの修学と生活を、長いスパンで支えていきたいと思っています。

 

 病そのものが持つ身体への脅威は言うまでもありませんが、私たちをさらに苦しめているのは、対人接触の制約という、ある種文明史的な危機です。人と人との交流を経済・文化さまざまな分野で極点近くまで高めていた21世紀の人間社会が、その虚を突くかのような挑戦を受けることなど、私自身予想もしていませんでした。

 打開の答えがどこにあるのか、確かな見通しはなかなか立ちそうにありません。ただ、人間社会はこれまでも深刻なダメージに直面し、「大文字の価値観」が揺らぐような事態に至ってなお、手に馴染んだささやかな「あり合わせの知恵」をやりくりし(ブリコラージュってやつですね)、そのつど隘路をくぐり抜けて、次なるステージを拓いてきました。

 それはたとえば、キャンパス内外で始まっている自発的な支援の動きであったり(本当にありがたいです)、あるいは急ごしらえのオンライン授業に萌したダイバーシティーとの意外な親和性、在宅勤務がワークライフバランスに示しつつある新たな切り口、読書という学習慣行がもつ社会変動に左右されない強靱さなど――難局のなかで行われた試行錯誤のなかには、新たな社会構想の芽がわずかながらも育ち始めているように感じます。

 もちろん、展望はなお楽観を許さないでしょう。感染の次なる波は確実視されていますし、新たな社会が同調圧力や分断・格差に覆われてしまう可能性にも気をつけておかなければなりません。魔法のような処方箋を手に入れるのは難しいかもしれませんが、私たちはメンバーの多様性を生かしながら、その時その時できることに粘り強く取り組んでいければと思っています。

 みなさん一人一人のお力、ぜひ貸してください。

 

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